
事 前 情 報
【本人及び家族の状況】
〈基本情報〉
68歳 女性 東京近郊(千葉県)の住宅地在住
要介護3 障害老人の日常生活自立度 A2 痴呆老人の日常生活自立度 正常
身長150p 体重45s
〈本人の希望〉
今のベットのある部屋は玄関や廊下の人の動きが伝わり、また、息子の帰宅時間が遅 くて落ち着かない。今までどおりに当たりのよい2階で生活したい。2階に上がれるようになりたい。
〈家族の希望〉
今までは1階が長男世帯、2階が本人世帯であった。本人の隊員に伴い、急遽1階に ベットを入れたが、できれば今までどおり2階で生活できるようにしたい。またできれば今までどおり〈少なくても多少は〉家事ができるようになってもらいたい。
〈生育及び生活歴〉
昭和10(1935)年横浜生まれ。高等学校(商業科)卒業後、横浜市内で会社勤め(事 務職)。25歳で高等学校の教員の夫と見合い結婚し退職。男女2人の子供を出産し、専業主婦。昭和43年、それまでのアパートは手狭になったので、現在の土地を購入し自宅を新築、転居した。以後現住所に生活している。
〈現病歴〉
平成15年6月10日朝、布団から出ようとしたところ起きあがることができず、吸 収社にて近所の救急病院に搬送される。救急車に乗るまでは意識があったがその後意識 消失。診察の結果、脳梗塞(右中大脳動脈領域)と診断され即時入院。保存的治療を受け るが、左片マヒが残存。8月25日、リハビリテーション目的で、都内の回復期リハビ リテーション病棟に転院し、理学療法、作業療法、言語療法を受け、病棟内4点杖歩行 見守りの状態で、10月30日に退院した。入院中に要介護認定を受けている。なお、 退院の1週間前にケアマネージャーが決まり、介護保険でポータブルトイレを購入、ベ ッド、マットレス、ベット用手すり、4点杖を取り揃えた。
〈即住歴〉
これまで医者にかかったことがないことが自慢だったが、今回の入院で糖尿病を指摘 され、現在、薬と食事療法(1200kcal)による治療中であるが、血糖値は安定してい る。また同様に高血圧も指摘され、降圧剤服用により140〜160/90程度で管理 されている。
〈家族構成と発病前の生活状況〉
70歳の夫、40歳の長男、39歳の長男の妻、10歳(男、小学5年生)と6歳(女、 保育園児)の孫の6人暮らし。夫は高等学校の校長を最後に60歳で定年退職後しばらくは、再雇用で事務仕事などをしていが、年金受給後(65歳以降)は無職。最近は庭いじりや趣味の魚釣りなどを楽しんでいる。長男は商社員で海外出張も多く不在がち、長男の妻は、長男とは大学の同級生で、現在地方公務員として都内の区役所に勤めている(事務職)。10歳の孫は学区の小学校に通学しており、長男の妻が帰宅するまでは、本人や夫が面倒を見ており、6歳の孫の保育園の迎えも、本人や夫が行くことが多かった。
また、調理や掃除など日常の家事はほとんど本人が任っていた。長男の妻にとっては、 仕事と育児の両立に欠かせないものであった。
夫は160p58s、長男は172p70s、長男の妻は162p53sで、現在のところ孫も含め、家族には健康上の問題や不安はない。
〈経済状況〉
夫と本人の共済年金と、長男と長男の妻の就労所得があり、現在の生活に問題はない。 本人の預貯金も500万円程度あり。
〈日常生活活動の状況(退院直前の病院での状況)〉
食事:ベット端座位にて自立。
排泄:日中は看護師等の付き添いにより病棟トイレを理容。移動は4点杖により見守 りで歩行可能だが、立体バランスが不良なため、下衣の脱着に介助が必要。ポータブルトイレを使用。移乗は自立だが、下衣の脱着と後始末に介助が必要。
更衣:上衣は自立。ボタンの脱着も可能。下衣及び靴下は介助が必要。
入浴:病棟の個別浴槽(家庭用浴槽)にて介助で入浴。着脱衣はいすに座って行うが、 下衣は介助が必要。浴室内は手すりにつかまって歩いて移動するが、短下肢装具を装着していないので不安定となり、介助が必要。浴槽出入りは手すりにつかまって腰掛けて、右側(非ミヒ側)から可能だが、マヒ側下肢の浴槽出し入れと浴槽内立ちしゃがみに介助が必要。洗体、洗髪はシャワーチェアに座って行うが、洗髪及び下肢を洗うには介助が必要で、上半身を洗うときには、ループ付きタオルを使用していた。
移動:歩行は靴べら式下肢装具を装着し、4点杖にて見守り〜軽介助で、20メート ル程度歩行可能。理体保持はバランスが悪く、また恐怖心もあるため手放しはできない。屋外歩行は困難。5p程度であっても段差昇降はできない(身体を支えるような介助が必要)。立ちしゃがみは座面の高さ40センチ程度のいすからはつかまって可能だが、それよりも低いところからは介助が必要である。
【退院にあたっての主治医の意見】
退院後はしばらくの間は、週2回程度の外来通院による理学療法、作業療法が必要である。その後は廃用症候群の予防の観点からも、外出機会を確保するためのサービスが必要と考えられる。また糖尿病、高血圧の管理も必要となるため、近所にかかりつけ医をみつけ、定期的に受診する必要がある。
【住宅の状況】
1階の台所、食堂、居間、浴室、トイレを2世帯で共用している。今回の入院前は2階の8畳和室、6畳和室、6畳納戸が本人夫婦の居室であった。8畳和室を寝室として使用していた。退院直後の現在は、長男世帯の部屋にとりあえずベットとポータブルトイレを入れて寝起きしている、という状態である。自宅周辺の道路には、急坂、階段等はない。
【現在の状況】
現在は退院直後(3日から1週間程度)。ほとんど歩行もせずにベット上で過ごすこと が多い。日中は家族の介護でトイレに移動し用をたしているが、夜間は使えていない。ポータブルトイレですませている。
家族はまだ入浴まで気が回らない状況。入浴は1回も行ってない。どうしたらよいのかもわからない様子。
外出はまったくしていない。
夫は本人の入院中、頻繁に見舞いに病院へ通い、本人の心の支えとなっている。夫は今後もできるだけがんばりたいと思っているが、日中本人と二人きりになると何かあったときの対応に不安を感じている。孫の保育園の送り迎えは行えない。今後どうするか、家族で思案中である。
本人入院後は、家事は長男の妻を中心に行っている。長男も協力しているが出張も多くあまり負担できていない。長男の妻は子供の世話に加え、夫及び長男の食事の世話など、家事の負担が重いと感じ始めている。
家族関係は良好で、協力し合っていこうという気持ちが固まっているが、具体的な計画性をもたず、当惑している状況。
最終的な決定権は本人と夫にある。話し合って決めている。息子夫婦は本人たちの決 定に反対する気持ちはない。
上記の事前情報をもとにグループで話し合い(感想)
2月23日、メルパルク札幌で福祉環境整備の考え方を学ぶ研修会を開催した。
会員約20名が参加。はじめに、介護保険の仕組みについて説明がなされた。
引き続き、脳梗塞(のうこうそく)によって左半身にマヒが残る68歳の女性と介護する家族の生活、ケアマネージャーのかかわりをまとめたビデオを上映。
参加者を3つのグループに分け、ワークショップ形式でビデオの中の家族のやりとりから、介護していく上で本人や家族にとって何が本当に必要なのかを討議した。
この後、1級建築士事務所自然(じねん)の東道尾氏が講師となり「自立支援につながる住宅改修」をテーマに解説。東氏は、介護のために住宅改修をした場合、介護保険で改修費の補助があるが、必要のない改修も少なくないことを指摘。「当事者にとって何が本当に必要なのか、考えてほしい」と呼びかけた。